皆さんは干物の魅力をご存知でしょうか。
・干物は臭い
・保存方法が分からない
・どう料理したらいいのか分からない
などの抵抗を感じていませんか?
実は干物はアレンジも出来て下処理も不要なので生魚よりも調理が簡単!
おまけに栄養価も高く、魚からしか得ることの出来ない栄養素も摂取する事が出来ます。
今回は皆さんに干物の美味しさの秘密から簡単な干物アレンジレシピまで紹介致します。
【目次】
古くから干物というのは魚の保存期間を延ばす為に用いられた加工食品です。
干物の方法にはいくつか種類があり、塩を用いた一般的な方法からみりんを使ったみりん干し、水分を抜く工程も天日干しや灰干しなど、様々な違いがあります。
更に、それぞれの地域で収穫できた魚の干物は、地域によって味や食感などの特徴の違いも楽しめるので、干物と一括りにするのはとても勿体無い!知れば知るほど興味深く奥深い料理なのです。
ではそれ以外に干物にするメリットはあるのでしょうか。
魚は干物にすると旨味が増すのはなぜ?
魚を干物にする利点は保存が効くからだけではありません。
なんと、生魚を干物にする事で旨味が増し、美味しさを強く感じる事が出来るのです。
ではなぜ旨味が増すのでしょう??
魚は適切な温度環境で干す事により、魚に含まれるタンパク質分解酵素が働き、旨味成分でもあるアミノ酸が生成されます。
このアミノ酸が多いほど旨味が増すという訳です。
旨味成分にはグルタミン酸やイノシン酸・グアニル酸などが挙げられます。
グルタミン酸=昆布・味噌・チーズなど
イノシン酸=牛肉・かつお節など
グアニル酸=干し椎茸・干しポルチーニなど
そしてこの旨味成分は、なんと組み合わせる事で旨味が増します。(旨味の相乗効果)
例えば、日本の和食文化では一般的に昆布(グルタミン酸)とかつお節(イノシン酸)でお出汁を取ります。これも旨味の相乗効果が起きています。もちろん、昆布だけ・かつお節だけ・で取る調理方法もありますが、単体のお出汁よりも旨味を感じる事が出来るのです。
干物でもこの旨味の相乗効果が起きているので、更に旨味が濃く、生魚とは一味違う味わいを楽しめるという訳です。
少し話は逸れるのですが、この「旨味」という味が日本独自の味だという事を皆さんはご存じでしょうか。
昔から味は甘味・塩味・苦味・酸味の4種類が外国共通の味覚でした。
後に「旨味」が研究・発見され、世界中で発表された事により、現在では旨味は「umami」と表記され、後に基本の5味として世界中に知られる味覚の一つになりました。
元々は外国には存在せず和食に使われた「旨味」ですが、昔から日本人はこの旨味を無意識に美味しいと感じ、追求してきた訳です。
そんな日本を象徴する独自の味が干物には詰まっているので、とても魅力的な食材と言えるでしょう。
干物のほとんどは冷凍食品?
皆さんは干物がほとんど冷凍保存だという事はご存じでしょうか。
干物は味や品質を損なう事なく冷凍保存が出来るため、最近ではほとんどの干物が冷凍食品として扱われています。
なので、ご家庭でも購入後すぐに食べない場合は、冷凍保存をしましょう。
干物は冷凍保存をする事で酸化を防ぎ美味しさを保つ以外に、臭いを防ぐ効果もある為、おすすめの保存方法です。
【保存方法】
・1尾ずつラップで包み、ジップロックなどにまとめて密封し冷凍保管します。
(小魚の場合)
・一度に調理する量ずつをまとめてラップし、ジップロックなどにまとめて密封し冷凍保管します。
では冷凍の干物はどう調理すればいいのでしょう。
冷凍状態の干物の美味しい焼き方「フライパン編」「魚焼きグリル編」
干物を焼く場合は、冷凍のままじっくりと焼きましょう。本来の美味しい状態の干物を堪能できます。
逆に急速な解凍は避けましょう。ドリップ(解凍する際に出る汁)が出てしまい、旨味成分が流れ出てしまう原因になります。
「フライパン」で焼く場合 *フライパン調理は皮面から!
①ひっつき防止のため、クッキングシートをフライパンに敷きます。市販の魚焼き用アルミシートを使用するのもおすすめです。
②フライパンは魚を焼く前に予熱し少し温めておきます。
③必ず皮を下にし、皮面から火を通していきます。火加減を弱火〜中火にし、じっくり焼いていきます。
④皮面が綺麗な焦げ目がつき、身半分に火が通り白っぽく変化したら、裏返して中火で焼きます。
⑤身に焼き色が付き、火が通ったら完成です。
フライパンは調理後の片付けが簡単なので、後処理を楽にしたい方におすすめ!
「魚焼きグリル」で焼く場合 *グリル調理は身から!
①ひっつき・焦げ防止のため、網にサラダ油もしくはお酢を塗っておきます。
②グリルは魚を焼く前によく温めておきます。
③身を上にし、身から火を通していきます。火加減は中火にし、焼き色が付くまで焼いていきます。
④焼き色がついたら裏返して弱火〜中火でじっくり焼きます。
⑤焼き目が付いたら完成です。
グリルは調理工程で余分な油が下に落ちるので、脂質を気にされている方におすすめ!
干物に含まれる栄養価紹介
干物には魚本来の持つ優れた栄養素が備わっています。
その中には人間にとって必要不可欠な栄養素もたくさんあり、また他の食材ではあまり摂取する事が出来ないものも含まれています。
また、干物にすることで栄養価数値が変化する事がありますので、下のグラフを参考にしてみて下さい。
魚本来の持つ主な栄養素と特徴
DHA・EPA
・体では生成できず、食べ物から摂取しなければならない栄養素
・魚以外の食材から摂取する事は難しい
・DHA→脳を活性化させ、記憶力向上や認知症を予防
・EPA→血液の凝固を抑え、高血圧や動脈硬化などの血管疾患などを予防
カルシウム
・骨や歯を形成し骨粗しょう症や骨軟化症を予防
・筋肉収縮の調節や血液凝固の補助
タウリン
・アミノ酸の一種で貧血予防や視界の疲労を回復
ビタミンD
・カルシウムの吸収を促進
・魚以外の食材から摂取できる量は少ない
生魚と干物の栄養素比較数値(図1・図2参照)
魚は干物に加工する過程で失う栄養素もあれば、使用する調味料によって増加するものもあります。
比較対象により栄養素の変化は様々ですが、単純に水分が抜けるため同じ質量でも干物の方がエネルギーや脂質が高く、アミノ酸が増加する傾向にある為、タンパク質が増える傾向にあります。
図1(例:ほっけ生魚100gとほっけ干物100g比較)
図2(例:アジ生魚100gとアジ干物100gの比較)
干物の栄養素変化の特徴
・同じ分量でも干物は水分量が減るため、エネルギーや脂質は上昇傾向にある
・アミノ酸の増加が見られるため、タンパク質が増える傾向がある
・保存を効かせるために干物には塩や調味料を用いるので、生魚より塩分は高くなる
・ビタミン類やカルシウム・リンなどは魚の種類によって増減が見られる
・魚や加工の仕方によって数値の変化は様々
焼くだけじゃない干物のアレンジレシピ
干物は下処理も要らず、骨まで食べられるものもあるので、調理が簡単です。今回はマンネリしないアレンジレシピを3選ご紹介します。
真サバの干物でサバちらし寿司
塩味の強い干物を合わせるので、寿司酢を塩分控えめに。サバと相性の良い醤油を加えたちらし寿司です。
材料(2人分)
酢飯用ご飯
・米 2合(300g)
・水 360cc
・昆布 5cm
合わせ酢
・米酢 200cc
・砂糖 大さじ5.5
・塩 小さじ2
・醤油 小さじ1
干物真サバ 1尾
錦糸卵 2個分
小口ねぎ 30g
紅生姜 30g
作り方
① 米を洗い、分量の水を入れて上に昆布を置き、浸水後通常通り炊き、硬めの寿司飯を炊く
② 合わせ酢は全てボウルに入れよくかき混ぜておく。酢飯用に130cc・サバ合わせ用に70ccに分けておく。(目分量で○)
③ 真サバは焼いてほぐしたらボウルに移し、②の合わせ酢70ccに漬ける。
④ 炊いたご飯に②の合わせ酢130ccを少しずつ回しがけしゃもじを水平にしながら切るように混ぜ、冷ます。
⑤ 器に酢飯を盛り付け、上から錦糸卵を全体にちらし、③の真サバを中央に盛り、小口ねぎと紅生姜をちらして、完成!
イカの一夜干しを使ったイカのペペロンチーノ
魚以外にも魚介を使ったお料理もおすすめです。イカはすぐに火が通るので、お料理も楽チン!
材料(2人分)
イカの一夜干し 1枚
玉ねぎ 40g
パスタ1.6mm 2束
ニンニク 3かけ
輪切り唐辛子 2g
オリーブオイル 大さじ3
パセリもしくはバジル お好み量
粉チーズ お好み量
作り方
① 玉ねぎはみじん切りにし、ニンニクは皮を剥き中央の芽を取りスライスに切る。イカは食べやすい大きさに切っておく。
② パスタ用のお湯をたっぷり沸かしパスタを表示通りに茹でる。茹で時間の1分前にザルに上げ流水でさっと冷ましておく。その際にお玉2杯分の茹で汁をとっておく。
③ フライパンにオリーブオイルとニンニク、輪切り唐辛子を入れ弱火でじっくり焼く。ふつふつと油が沸いてきたら一旦ニンニクと唐辛子をお皿に移し、残ったオリーブオイルで玉ねぎを炒める。
④ 玉ねぎがしんなりしてきたら、イカを加えて中火で焼く。
⑤ イカに火が通ったらパスタを加え軽く混ぜ、ニンニクと唐辛子・茹で汁を加える。
⑥ 火は中火のまま、フライパンを手早く振りながら油と茹で汁が白っぽく乳化するまで炒める。ある程度水分が蒸発し、油は乳化してパスタに絡まるように変化したら火を止め、器に盛り付ける。
⑦ お好みでパセリと粉チーズをかけ、完成!
ちりめんじゃことほうれん草のナムル
釜茹でされた後、天日でじっくり干されたちりめんじゃこは扱いやすくてどんな食材にも合う食材です。ナムル以外にも煮浸しにも最適!
材料(2人分)
ちりめんじゃこ 30g
ごま油 大さじ1
ほうれん草 4束
人参 40g
【A】
醤油 小さじ1
砂糖 小さじ1
鶏ガラスープの素 小さじ1/2
作り方
① ほうれん草は5cm幅に切り、茎と葉を分けておく。人参は千切りに切る。
② フライパンにごま油とちりめんじゃこを入れ弱火で炒める。じゃこがはねるので、火傷に注意しながらカリカリになるまで炒る。
③ 大きいボウルにA調味料を全て入れ混ぜ合わせる。②をごま油ごと同じボウルに入れ軽く混ぜ、冷ましておく。
④ 野菜を茹でる。最初に人参を水の状態から茹でる。半分火が通ったら塩をひとつまみ加え(分量外)ほうれん草の茎、葉の順に加え茹でる。全てに火が通ったらザルにあげ、流水で冷やす。
⑤ 水気を切った④を③のボウルに入れ、混ぜ合わせる。
⑥ 器に盛り付け、完成!
いかがでしたでしょうか。
今回、この記事で「干物に魅力を感じた!」と思った方は、是非今夜のおかずに干物を挑戦してみて下さい!
自分好みの干物が見つかりますように・・。
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