3月12日に新潟市内で漁業関係者向けに行われたウエカツこと上田勝彦さんの神経締め講習会に新潟漁協山北支所の漁師として参加してきました。
県内各地から約100名の漁業関係者が集まり、ウエカツ先生の実演も含めたアツい講習を皆さん真剣に聞き入っていました。
新潟県は、板曳き網漁をはじめとした底曳き漁が中心で、多種多様な魚を一人(小人数)で効率よく大量に水揚げする事が重要視されているので、神経締めなどの一匹の魚の付加価値を上げる取り組みに関しては、かなり後進地域だと思います。
漁獲量の減少や魚価の低迷など、先行きが不安で将来の事を真剣に考える若い漁業者の参加が多い様でした。
ウエカツこと上田勝彦さんとは
※画像はウエカツ水産Facebookページ参照
島根県出雲市出身
長崎水産大学水産学部(在学中に漁師を経験)卒業後に水産庁入庁
2015年に水産庁を退職して株式会社ウエカツ水産を設立
水産庁時代から、魚の鮮度保持技術を開発や魚食普及に奔走。
NHKの『あさイチ!』をはじめとした数多くのTV番組に出演して、魚の食べ方や重要性を発信している方です。
THE漁師!!という感じの風貌とわかりやすいトークで人気の方で、私たち漁業関係者にとってはカリスマ的な存在です。
魚の神経締めとは
通常の活け締めは、魚を即殺して腐敗の進行をはやめる血液を抜く事です。
それに対して神経締めとは、通常の活締め+神経から出る伝達物質を破壊する事を意味します。
具体的な内容に関しては、ウエカツ水産さんの企業秘密なので控えさせてもらいますが、理想的な神経締めには複数の工程が必要になります。
締めて神経を抜く工程自体は、難しい事ではなく多くの漁師が行っていますし、YouTubeなどで少し勉強すれば子供でも簡単に習得できます。
しかし、全ての工程を行い100%の神経締めを行うとなると一気にハードルが上がります。
神経締めにより得られる効果
神経締めによる主なメリットは以下の三点です。
- 鮮度保持期間が長くなる
- 旨味へと変化する物質の消費が抑えられる
- 旨味のピークが長続きする
まとめ
ウエカツさんの講習は、我々漁業者にとっても目から鱗な事が多く、大変勉強になりました。
しかし、今回学んだ神経締めを100%実行できる県内の漁業者は、ほとんどいないと思います。
一人乗りや少人数の底曳き漁が主体の県内の漁業者には、全ての工程を行うにはハードルが高過ぎます。
技術的に難しいという事ではありません。
環境や設備的に難しい一つの工程があります。
仮に、この100%の神経締めを行う事で、一匹の魚の価格が10倍以上に跳ね上がるのであれば、手間が大幅に増えて水揚げ量が落ちたとしても多くの底曳き漁師が取り組むでしょう。
しかし、現実には2~3年頑張って継続して行い、取り組みが成功したとしても一部の魚(水揚げ量全体に対して数パーセント)の市場価格がキロ数百円上がる程度だと思います。
時間や手間を投資と考えた場合にそれで得られるリターンがあまりにも少なすぎます。
逆に釣り漁や延縄漁など、水揚げ量は少ないが、一匹あたりの価値が高い魚を水揚げする漁の場合は恩恵を受けやすいと感じます。
今回学んだ事をそれぞれの漁業者が、自分の状況に合わせて柔軟に取り込んでいくのが良いのではないでしょうか。
私もウエカツさんに教えて頂いた知識を自分なりに咀嚼して吸収させていただきました。